HEROZ株式会社がAIを身近にする理由について語る 将棋ウォーズからHEROZ ASKへ

生成AIの普及に伴い、AIを活用した業務効率化が進展している。しかし、「AIをどのように業務へ取り入れれば良いのかわからない」「セキュリティ面に不安がある」と感じる企業も多い。
このような状況の中、HEROZ株式会社は法人向け生成AIサービス「HEROZ ASK」を展開している。
同サービスは、Azure OpenAI Serviceを活用して構築された法人向け生成AIサービスであり、AIに慣れていない人でも使いやすいユーザーインターフェースや、企業ごとに情報を整理・活用しやすい環境づくりが特徴である。
また、同社は将棋アプリ「将棋ウォーズ」の開発・運営でも知られ、将棋AIを通じて「AIをより身近な存在として届けること」にも取り組んでいる。
今回は、HEROZ株式会社の代表取締役CRO・髙橋知裕氏に、AI技術に対する考えや「HEROZ ASK」の開発背景、同社が目指す未来について話を伺った。
(取材・文 上田智也)
将棋AIから始まったHEROZ株式会社の挑戦
2009年に創業したHEROZ株式会社は、「一人でも多くのヒーローの誕生」を企業理念に掲げ、AI技術を活用したサービスを展開している。代表取締役CROの髙橋知裕氏は、創業当初からテクノロジーの力で社会をより良い方向へ変えたいという想いがあったと振り返る。

共同創業者であり、代表取締役CEOの林隆弘氏は、アマチュア将棋のチャンピオン経験を持ち、将棋AIを開発するエンジニアとのつながりもあった。当時はスマートフォンやSNSが急速に普及し始めた時代であり、髙橋氏らはモバイルサービスとAI技術を組み合わせることで新しい価値を生み出す可能性に注目していた。
この背景から、HEROZ株式会社では将棋AI技術を活用したサービス開発に取り組むこととなり、その代表的なサービスの一つが将棋アプリ「将棋ウォーズ」である。
同アプリには、世界コンピュータ将棋選手権で優勝・入賞実績を持つHEROZのAIエンジニアの技術が活かされており、初心者から上級者まで幅広いユーザーに利用されている。現在では累計800万ダウンロードを突破し、全プレイヤーの対局数は11億5千万局を超えている。
また、HEROZ株式会社ではAIの精度を追求するだけでなく、「AIをより親しみやすい存在として届けること」も重視している。例えば、「将棋ウォーズ」では対局をサポートするAI機能に“棋神(きしん)”という名称を採用している。
髙橋氏は、エンターテインメント性を取り入れながらより多くの人に将棋を楽しんでもらいたいという想いがあると述べた。
「負けるから辞める」を減らしたかった
HEROZ株式会社が提供する将棋アプリ「将棋ウォーズ」は、単に将棋を楽しむためのゲームではなく、「将棋を続けやすくすること」も重視して開発されたサービスである。髙橋氏によると、将棋を遊んだことがない人の中には、「ルールが難しい」「継続できない」「負けることでモチベーションが下がってしまう」といった理由から、将棋に苦手意識を持つ人も少なくないという。
特に「負けるから辞めてしまう」という点は、将棋人口の拡大において大きな課題の一つであると考えられている。そこで「将棋ウォーズ」では、AIによる対局支援機能を搭載している。
同アプリには、世界コンピュータ将棋選手権で優勝した実績を持つAI技術「Ponanza」が活用されており、プレイヤーが対局中に手詰まりになった際にはAIが最適な一手を提案する機能が搭載されている。このAI機能は“棋神(きしん)”と呼称されている。
AIが対局をサポートすることで、初心者でも勝つ体験を得やすくなり、将棋に対するモチベーション低下を防ぐ狙いもある。また、対局後には局面に応じた“正着”のフィードバックも行われるため、学びながら楽しめる仕組みも取り入れられている。現在では将棋初心者だけでなく、プロ棋士の対局研究や振り返りにも活用されている。
HEROZ株式会社では、AIによって「強い人だけが楽しめる世界」にするのではなく、より多くの人が将棋を続けやすい環境を作りたいと考えている。

法人が“安全にAIを使える環境”を目指して
HEROZ株式会社では、法人向け生成AIサービス「HEROZ ASK」を提供している。同サービスは、Azure OpenAI Serviceを活用して構築された法人向け生成AIサービスである。

HEROZ ASKが誕生した背景には、近年社会問題として注目される“シャドーAI”の存在がある。シャドーAIとは、企業や組織のIT部門・セキュリティ部門が把握していないAIツールを、従業員が独自の判断で業務利用してしまう状況を指す。
生成AIの普及によって業務効率化への期待が高まる一方、企業側では「どこまで情報を入力して良いのか」「セキュリティをどのように管理するのか」といった課題も生まれていた。こうした背景から、HEROZ株式会社では法人が安全性を意識しながらAIを活用できる環境づくりに取り組むようになった。

同社では以前から「HEROZ AI」というサービスも展開しており、導入事例としては、紙ベースで管理されていた資料やノウハウをデータベース化し、各社に合わせたAIの企画・開発・運用を行っている。また、HEROZ株式会社は将棋AI開発を通じて培ってきたAI技術を活用し、株式会社バンダイナムコエンターテインメントや株式会社コーエーテクモゲームスなどの企業に対しても技術提供を行ってきた。
こうしたAI活用の知見を背景に、より多くの企業が日常業務の中でAIを活用しやすい環境を作りたいという想いから、「HEROZ ASK」の提供に至った。現在、HEROZ ASKは、野村不動産や鹿島建設などにも導入されており、導入社数は約500社、サービス継続率は99%に達している。
AIに慣れていない人でも使えるサービスへ
HEROZ ASKの特徴として、HEROZ株式会社は「AIに慣れていない人でも使いやすいこと」を重視している。近年、生成AIサービスは急速に普及している一方で、「最初に何を入力すれば良いかわからない」「使い方のハードルが高い」と感じる人も少なくない。
髙橋氏によると、一般的な生成AIサービスはシンプルなUIである反面、AIに慣れていない人にとっては「何をすれば良いかわからない」状態になりやすいという。そこでHEROZ ASKでは、単にAI機能を提供するだけではなく、直感的に操作しやすいUI設計にも力を入れている。
例えば、中小企業では部署ごとにチャンネルを作成することが可能であり、生産管理部であれば生産計画、品質管理部であれば過去のトラブル事例やクレーム情報など、それぞれの部署に応じた情報を整理・共有しながらAIを活用できる仕組みを取り入れている。
また、HEROZ ASKでは、ChatGPT、Claude、Geminiなど複数の生成AIにも対応している。さらに、AIを活用する際に必要となる“プロンプト”についても、利用者側が細かく考え込まなくても使いやすい設計を意識している。実際に利用企業からは「見やすく、使いやすい」といった声も多く寄せられている。
現在、HEROZ ASKは特に製造業を中心とした中小企業から大きな反響を得ている。紙ベースでノウハウや顧客情報を管理している企業では、「社内情報がバラバラに存在している」「誰がどの情報を持っているのかわからない」といった課題を抱えるケースも少なくない。HEROZ ASKでは、そうした情報をデータベース化し、AIを通じて社内全体で活用しやすい状態を目指している。
同サービスは1人あたり月額900円(税抜)から利用可能で、初期費用は50,000円(税抜)からとなっている。髙橋氏は「より多くの企業にAIを活用してほしい」という想いから、導入しやすい価格帯を意識していると述べた。
HEROZ株式会社が目指す未来とは
HEROZ株式会社では、将棋AIやHEROZ ASKをはじめとしたサービスを通じて、「AIを一部の専門家だけのものにしないこと」を重視している。髙橋氏は、AIについて単なる業務効率化ツールとしてだけではなく、「人の可能性を広げる技術」であると考えている。
実際に、同社が展開する「将棋ウォーズ」では、初心者が将棋を続けやすいようAIが対局をサポートしている。また、「HEROZ ASK」についても、AIに詳しくない人でも使いやすいUI設計や直感的に操作しやすい環境づくりを重視している。
こうしたサービス設計には、AIをより身近な存在にしたいという同社の考えが反映されている。現在、HEROZ株式会社では、エンターテインメント業界や金融業界、建設業界など、幅広い分野でAIサービスを展開している。髙橋氏は将来的には「AI革命を起こしたい」と語る。
その一方で、HEROZ株式会社が目指しているのは単にAI技術を高度化することだけではなく、「一人でも多くのヒーローの誕生」という企業理念のもと、AIを通じて一人ひとりが誰かを支えたり、自分らしく力を発揮できる環境を広げていきたいと考えている。
HEROZ株式会社/代表取締役CRO:髙橋知裕/代表取締役CEO:林隆弘/所在地:〒108-0014 東京都港区芝5-31-17 PMO田町7F/https://heroz.co.jp//将棋ウォーズ:https://shogiwars.heroz.jp//HEROZ ASK: https://herozask.ai/

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